本書は、19世紀末から20世紀初頭にかけてのヨーロッパを中心とした建築およびインテリアデザインに焦点を当て、「世紀末（Fin de Siècle）」の美学と文化的空気を探求するものである。アール・ヌーヴォーやウィーン分離派などの様式に特徴づけられるこの時代の建築・装飾芸術を、写真家・田原桂一が高コントラストのモノクローム写真で鮮やかに切り取る。流麗な線、装飾性に富んだ細部、そして空間に漂う独特の緊張感が見事に表現されている。建築史家・三宅理一による解説文は、当時の社会的背景や芸術思想との関係を明らかにし、空間が語る時代の物語を丁寧に紐解いている。
